PCパーツレビュー(@七華)
PCパーツレビュー(@七華)
2025/03/07 「余談」を追記
※この記事は2022年6月のブログ記事をリメイクしたものです。
基本的な評価基準は2022年時点のものとなります。
実はこのパーツを買った当時の記憶がない管理人だが、ブログのオフラインアーカイブは残していた。
そのため、このパーツを買った経緯を詳しく記述できる。
このマシンは元々CPUにRyzen 7 3700X(以下、Ryzen XはRXと略記)を用いていた。
Zen2世代の8コア・16スレッドでそこそこ省エネ、そこそこ速い優等生ではあったが…
当時の使用環境だと、どうもシングル性能が足りない。
かと言って、AM4以外のプラットフォームに乗り換えることもできなかった管理人。
そこで目についたのが「Zen3世代のRyzen」である。
どうせZen3を買うなら「一番いいのを頼む」…そうして行き着いたのが今回のR9 5950Xである。
購入当時のCPU・GPU宣伝用ベンチマークの一覧。
2025年現在はCore UltraシリーズとR9 9950X/3Dの一騎討ちであるが、この頃はR9 5950Xが頂点であった。
しかもR9 5950Xは2020年後半発売、i9-12900Kは2021年末発売と、ほぼ1年の差がある。
電力効率や汎用性の面で、R9 5950Xはnon-ゲーマー向けに安定して売れていたことを考えると、
(良い意味で)恐ろしいCPUだったと思える。
なおCore iは…(時限爆弾とか超高燃費とか…酷い)
2025/03/06 新規掲載
こちらのセクションでは、ざっくりとZen2→Zen3による変更点をまとめる。
大きく言えば「CCDの構造変更」と「分岐予測ペナルティの軽減」である。
[参考サイト01]
このうち、「CCDの構造変更」については、右のような図を作ってあるのでご覧頂きたい。
Ryzenシリーズ自体が8コアごとにCPUダイを分けた構造ではあったが、Zen2まではダイの中で更に4コアずつ分かれていた。
それがZen3になり、8コアブロック1つで済むようになった上、単一のL3キャッシュへ同時にアクセスできるコアも増えた。
そのため各コア間のレイテンシが改善され、分岐予測ミスのペナルティ軽減と相まって大幅なIPC上昇を実現したのである。
そこに加えてシングルコア時のブーストクロックも大きく伸びたのだから、速くならない訳がない。
ゲームをしないとは言えど、マルチコアを使い切るのが苦手なレガシーアプリをよく使う管理人。
これなら期待できそうである。
…それを自力で検証したのが今回のベンチマーク集・レビューとなる。
検証したのは以下のベンチマークタイトル。
7-Zip 内蔵ベンチマーク (圧縮・解凍をnT/1Tで実行) :圧縮・解凍
Cinebench (R15/20/23をnT/1Tで実行) :レンダリング
CPU-Z 内蔵ベンチマーク (x86/x64をnT/1Tで実行) :CPU特性評価
CrystalMark2004 (ALU/FPUのnTのみ) :CPU特性評価
Mozilla Kraken JS (使用可能なブラウザから実行) :軽負荷時の応答特性
全てCPU性能の順当なベンチマークであり、ゲームやGPUとの組み合わせ検証まではしていないことに注意。
また、当時の検証環境が32GB DDR4-3600メモリ使用、Win10 Pro、GPUがRTX 3070とGTX 1080のタンデムと、
変態仕様な点にも注意が必要ではある。
2025/03/06 新規掲載
Zen3になってIPC・クロック共に上昇すれば、シングル性能も上がると見込まれた。[参考サイト02]から計算
今回検証したCPUの基本的なハードウェアスペックを記載。
プロセスルールやTDP、コア数の変化にご注目。
まずは7-Zip。解凍・圧縮は比較的ライトユーザーでもよく使うだけに、最も効果が実感しやすい。
解凍・圧縮とも、All Threads(以下、nT)はR7 3700Xと比べ2倍程度に伸びている。
また、Single Thread(以下、1T)でもR7 3700Xから2割程度伸びており、順当な進化を見せつける。
一方で、R7 3700X自身もR9 5950X程ではないにせよ、他の旧世代機と比べ大幅な強化を見せつけている。
事実、この中でシングルスレッド動作時に4000MHz以上で動くのはR7/R9組だけなので当然といえば当然か。
かつてメイン機で使用していたi7-4770も、解凍・圧縮の両面で大差をつけられている。
C2D E6850と比べれば確かに大幅に高速化していたとは言え、Haswell世代は登場から10年以上経つ。
今の時代にメインを任せられるような性能ではないだろう。
続いてCinebenchでのレンダリングテスト。
R15がブースト込みの性能を、R23が素のコア性能を確認できると考えて良い。R20はその中間。
流石に時間が長く、加熱によりブーストが落ちてくるR20/R23ではnTで2倍…とまではいかない。
しかしR15は大幅にスコアを伸ばしている上、1Tでも2割程度スコアを伸ばしている。
コア数2倍の割に消費可能な電力(PPT)が増えておらず、クロックも伸び切らない中でのスコアだ。
素直にスコアだけ見れば「すごい」と言わざるを得ない。
なお、i5-580Mとi5-6200Uの力関係については、命令セットとクロックの差が大きく出ている。
(AVX非対応でスコアを落とす傾向がR20/R23の結果から見える)
また、対応OS・ハードウェアの都合により、この先欠損値が生じている。
お次はCPU-Zによる、比較的短時間で終了する瞬発力テスト。
x64では素直にコア数・クロック数・IPCに応じてスコアが伸びる傾向が見られたが、ここで異変が起こる。
x86テストのnTでは順当に成績が伸びたように見えている。
しかし、R7 3700Xがi7-4770に対してコア数比で成績を伸ばしきれていないのだ。
そこで1Tテストの結果を見ると、i7-4770がトップに。それどころか、i7-4712MQまでもがR7/R9を超える。
何かの間違いかと思い10回以上テストしたが、結果はいずれも同じだった。
そして、x86/1TでR7/R9がC2Dとほとんど変わらない成績であることも変わらず。
少なくとも、Zen2/Zen3のRyzenは「古すぎるソフトウェア」でそれほど強みを出せない可能性がある。
…こんな形でi7-4770の旧メイン機を温存する理由が見つかってしまうとは。
世の中何が要求される可能性があるのか、本当にわからないものである。
古のベンチマークソフト「CrystalMark2004 R7」を用いた、ALUとFPUのテスト。
このテストでは、nTのみの計測となっている。
ALUに関しては、ALU内部の高速化もあり大幅な速度向上が見られる。 [参考サイト03]
R7 3700Xとのコア数・クロック数比較での想定を大幅に上回る結果であり、文句なしの進化を遂げた。
どうやらALUに関してはZen2→Zen3でかなり改良されているようだ。
一方、FPUに関してはPBOの有無で大きく性能が変わった。
当時は何度試してもPBOの有無で2割も変わったことや、再現性が高かったことを踏まえ、このまま掲載する。
おそらくFPUの性能についてもいくらか上昇している一方で、それ以上にクロックが伸びなかったのだろう。
ALU/FPUは実行ユニットの性能が純粋に比較できるため用意してみたが、やはり世代間で順当に成長している。
若干i5-580Mとi5-6200Uが逆転しているのが気になるが、このテストの負荷であればクロックの高さがより強く作用したのだろうと思われる。
最後のテストはインターネット閲覧を想定した、比較的1T寄りのベンチマークである。
快適とされる1000msのラインはi7-4770でも突破。
そこから踏み込んで500msのラインをギリギリながら突破したのがR9 5950Xである。
R7 3700Xと比べて2割程度高速化していることを考えると、やはり順当に1T性能が伸びたことが大きい。
事実、Webブラウザ使用における最大のボトルネックはインターネット回線であることを踏まえても、
「どうせマルチタスクさせるから」という一言で片付けつつ性能を盛れるなら、悪くはない選択肢である。
(R7 3700Xでもブラウザ程度ならオーバースペック、それはそうだがブラウザ専用のマシンがあるか?と)
2025/03/06 新規掲載
検証条件はこちらに示した通りで、Cinebench R20を用いて負荷を掛けた。
負荷を掛けるスレッド数に応じてコア毎の負荷の割当が変わり、それに応じて動的に消費電力もコアクロックも変動する。
確かにフルロード時はPBO当ててもソフト読みで150Wと大人しいし、AK400と比較的安価なクーラーの割に発熱も少ない。が、これには裏がある。
R9 5950Xは1パッケージ内でCCDが2枚、IODが1枚と3枚のダイから構成されており、
IODの消費電力を無視したとしても150Wを2枚のCCDで折半するように調整されている。
つまり、フルロード時の発熱は75W/ 1CCD(単純計算)と、かなり大人しいのだ。
しかし、CCDは1枚で150Wを喰い潰すことも可能である。
理論上、片方のCCDだけをフルロードさせることも可能であり、現にこの検証では、8T負荷時に起こっている現象がある。
片方のCCDの物理コア全てが稼働した場合、CPU使用率がわずか36%でありながら148Wも喰い潰す。このときの発熱は148W/ 1CCD(単純計算)。
事前報でも「(1CCDの)5800Xはかなり冷やし辛い」とのレビューが多発している。
[参考サイト04]これは代表例の1つに過ぎないが…。
中途半端な負荷であり、片方のCCDに全ての負荷が集中すると簡易水冷でも冷やし辛い模様。
適切に使ってやるには、やはりCCD間でのタスクシフトがある程度必要と考えた方が良い。
あるいは開き直ってCPUフルロードで使う場合なら、空冷も安全である。
どちらにせよ、「エントリー空冷で使えるが、一工夫ほしい」といったところか。
2025/03/06 新規掲載
全体を通して一部のレガシーソフトに対する苦手は見られるものの、うまく調整してやれば安い空冷環境+安いM/Bでも安心して使える。
それでいて当時の一般向けCPUとしては最強レベルの性能を対競合比で低燃費で手にすることができる、
と「とにかく高い・在庫がない」以外の欠点が見つからない、CPU界最高傑作の一つだと言って良い。
シングル性能も当時としては最強格、マルチ性能は文句なしの最強、競合の半分の消費電力だ。
加えてAM4の古いM/Bを流用することもできる。
下手にハイブリッドコアを採用していないこともあり、低性能コアへの割当がないのでどんなソフトでも安定した性能が出る点も魅力だ。(i9-12900はそれがあった)
1世代前のZen2からでさえ性能向上を強く実感でき、Zen2の弱点を見事に克服しながら、同じプロセスルールで製造しているのだから、見事としか言えないだろう。
そんなR9 5950Xも発売から4年が経ち、後継のZen4/Zen5世代が出てきてはいる。
しかし、未だにAM4プラットフォームへの需要は根強く、同じコア数のR9 5900XTが登場したこともあり、先輩格、そしてAM4の絶対王者として参考にされる可能性を秘めている。
そんなR9 5950Xを、この先も末永く使い続けていきたいと思うのであった。
実はあの後5950Xの負荷スレッド数と性能や挙動について調べたら、1件だけ日本語で記事を見つけました。
[参考サイト05]
レンダリングでの検証を行っており、
16Tまでは概ねスレッド数に反比例した所要時間となったこと
片方のCCDから順番に使われる傾向があったこと
各CCD内で性能が高い順にコアを使用していること
負荷スレッド数が増えるほどCPUクロックが下がること
が挙げられていました。
ここまでは(管理人が検証していない、純粋な性能を除いて)この検証と同じみたいです。
しかしながら、他に5950X(をはじめとする2x CCD型のRyzen)を調べているサイトが見つからず、現実的なシチュエーションでの扱いやすさを考えるためにもう一段深堀りしないといけないな、と思いました。
これはここだけに限らず、多くの、そして全世界のレビューサイトに当てはまることですが…
(TechPowerUpですらコア毎の挙動を調べてないってマジ…?)
コストの都合から中古購入に頼らざるを得なかったが、
それでも自信を持って「最高の買い物だった」と言い切れる、頼もしい逸品。 →
2025/03/07 追記
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