2024/10/22 現地訪問
2026/02/14 記事公開
糸魚川から新幹線ではなく3セクで上越妙高の宿まで戻る途中。
中の人は「日本有数のモグラ駅」こと、筒石駅に立ち寄ることにした。
旧・北陸本線から北陸新幹線開業に伴い3セクの「えちごトキめき鉄道」に移管された区間。
1両編成の気動車と長大な日本海縦貫線貨物列車が走る区間である。
そんな区間に、トンネルを間借りしたような形で駅が存在する。
それがこの「筒石」駅。
11.353kmの頸城(くびき)トンネルの途中にあり、この駅自体がトンネル掘削時の斜坑を利用した駅である。
降り立ったホームは非常に狭いが、この長大トンネルでは無駄な掘削を最小限にしたかったのだろうか。
黄色い線の内側がわずか人1人分。
利用客数は2024年度で1日平均10人。
旧・北陸本線の中でも特に輸送密度が低い区間とは言え、暗くて狭いこのホームは少々危ない。
重たい引き戸を開けると、とんでもなく長い地下通路が現れる。
それもそのはず、この駅のホームは地下40mの深さにある。
集落から少し離れた駅舎まで、延々と階段を登ることになる。
もちろん、こんな駅にエレベーターやエスカレーターなどない。
物理的にバリアフリー不可能、ホーム前待合からもバリアフリーをやる意義が感じられないだろう。
ところどころ、JR西日本時代のロゴが残っている。
上越市の直江津駅までは元々JR西日本の管轄だったので、当然か。
階段を登った先に曲がり角。
この角を曲がった後も階段…だが、塞がれた斜坑と、スロープつきの階段。
斜坑の奥は確認できなかったが、2007年時点では灯りがついていたらしい。(参考記事)
しかしこのスロープ、バリアフリー性能は皆無だろう。
あまりにも急傾斜・長距離すぎる。
地上の明かりが見えるも、駅の外へ出るにはもう少しだけ歩く必要がある。
長いトンネル・斜坑から凄まじい風が吹くからか、風除けの板でガードされていたり、天井と壁の間に隙間が空いていたりと、工夫が見られる。
ようやく風除けゾーンを抜けると、駅設備らしきものが見える。
しかしこの駅、2019年から無人化されていることを考えると、もう何年も使われていないのだろうか。
少々もったいない設備だと思い、地上側の待合室に入る。
なんと海抜66m、トンネル内とは言え海沿いを走るこの区間でこんな標高の駅があるとは誰が想像するだろうか。
ちなみに最寄り集落(筒石)は海に向かって急坂を降りたところにある。
なおこんな駅だが列車はほぼ毎時1本来る。利便性はさほど悪くはないだろう。
地上待合には「推し駅プロジェクト」の一環として、NGT48の水津 菜月さん等身大パネルが設置されていた。
また、デジタルスタンプラリーの張り紙もされていたが…
高齢化著しい糸魚川市筒石地区で、この客数でどれほどの効果があるのかは謎である。
元々有人駅だったこともあり、地上待合もそれなりに造られていた。
だがどうしても寂しい感じに見えてならない。
もっと言えば、NGT48の等身大パネルが更に寂しさを強調する。
駅前は小さな空き地と、集落へ続く道だけ。
少し集落の方に進むと、谷間から奥に曇り空と日本海が見える。
それもそのはず、筒石集落は海抜5mほど。
険しい崖にへばりつく、わずかな平地に並ぶ集落だ。
こんなところから見える訳もなく、坂の下へ向かった。
集落から筒石駅を利用するとなると、いかに大変かがよく分かる。
なんせ60mの高低差を登って駅に入り、駅の中で40mも下るのだ。
それが糸魚川の郊外で暮らす、ということなのかもしれないが。
少し谷の向こうに目をやると、立派な砂岩泥岩互層が木々の間から見える。
これもこの地域の特徴的な地形・地質であり、この先の集落へ向かう途中では実際に触れる露頭も存在する。
だけど…これらの地形を観察する人は、私が見た限りでは誰一人、いなかった。
新潟・群馬を中心にいくつか存在するとは言え、数が極めて限られるモグラ駅。
単なる地下駅であれば大都市の地下鉄でいくらでも見ることができるが、トンネルの中に駅を作り、そこにたどり着くまでに「人力だけで移動しなければならない」というのは珍しい。
しかもトンネルを掘るときの斜坑を再利用していることも、ロマン要素としては高評価だろう。
だがしかし、鉄道以外のアクセスが非常に悪い。
鉄道アクセスは糸魚川・直江津のどちらからもほぼ毎時1本の列車があるから良いが、それ以外では集落にたどり着くまでが大変だろう。
天下の国道8号があると言えど、国道は海沿いスレスレを走っている。
そこから初見で探すのはかなり厳しいと言わざるを得ない。
かと言って、本数が多少多いローカル線の駅程度を目的に訪れる人は更に少ないだろうし、名所として案内するなら鉄オタ向けに割り切った方が良いのかもしれない。
そんな駅だが、周辺は昔ながらの筒石集落や壮大な砂岩泥岩互層と、ニッチではあるが見どころがまとまっている。
糸魚川東部~上越市西部の観光ついでに立ち寄るのが、現状最もおすすめの楽しみ方なのかもしれない。